不動明王
不動明王(えりも町町指定文化財4)(平成14年3月20日指定)
えりも町本町法光寺の境内にある石碑の一つである。法光寺には本町内各地から移設された石碑があり、この不動明王も、元来の設置場所から移設されたものと考えられる。
製 作 年:文化十年(1813年)
石 材:花崗岩
横×幅×高:61.5×44×85cm
碑 文:裏)文化十年癸酉三月
施主 高田屋
幌泉場所は文化九年(1812年)の幕府入札によって、文化十年(1813年)から嶋屋佐次兵衛が請け負うことになっていたが、実際は高田屋嘉兵衛が経営していたと考えられている。
文化九年(1812年)高田屋嘉兵衛は、国後島においてロシアに捕らえられ、カムチャッカへ移送されていた。高田屋嘉兵衛がロシアから蝦夷地に帰還したのは、文化十年(1813年)5月に国後島へ戻り、松前に帰りついたのは7月17日である。
嘉兵衛がロシアにとらわれたことを知った高田屋は、嘉兵衛の出身地、淡路島や兵庫で、嘉兵衛と水主たちの無事帰還を祈願する奉納がおこなわれていた。
不動明王が奉納されたのは、文化十年3月であることから、そのとき嘉兵衛はロシア側に拘束されており、幌泉でも嘉兵衛らの帰国を祈願する法要が執り行われていた可能性を示している。
一般に不動明王は、浄菩提心をもって行者の諸願を成就し、諸々の災害を除き、また財富を与える仏尊として、古来より多くの信仰を集めている。
この不動明王は、江戸時代末の幕府、蝦夷地とロシアとの関係、場所請負人高田屋嘉兵衛と高田屋の信仰と歴史を記録する貴重な文化財である。